アンデルセンの人魚姫と言えば、みなさんよくご存知ですよね。王子様に恋をするも、その恋心は成就せずに最後は泡になって消えてしまう、あの悲しい人魚姫のお話。
そのお伽噺をベースとしたポーランドのミュージカル映画『ゆれる人魚』。
美しい人魚の姉妹がナイトクラブで一躍スターになるが、姉のシルバーがイケメンベーシストのミーテクに恋したことから歯車が狂い出す、という現代版人魚姫。
姉妹の美貌や映像の美しさとは反対に、まるで大蛇の様な人魚の尾ひれがグロテスクで、画面から生臭さが漂ってくるような気さえする。
シルバーがミーテクと結ばれたい一心で決意するとある行為も、正直吐き気がするほどの嫌悪感に満ちながら、一時流行った「本当は恐ろしいグリム童話」のように残虐でありながら刺激的。
観たくないのに観てしまう、そんな人間の心理をついてくる、血生臭くも不思議な魅力に溢れている作品です。
それにしても。
シルバーが恋するベーシストのミーテク。これがね、色男なんです。
ベーシストってとこがまたね、ふわふわとして捉え所のない男性像にぴったり(個人的解釈です)。女性って、こういう捕まえたと思ってもヒュルっと逃げていく男性に弱い部分ありませんか? 母性をくすぐられる様な。
もちろん見た目も金髪ゆるふわパーマでイケメンなんだけど、それ以上に醸し出すゆるゆるとした雰囲気に心絆されちゃうのですなー。
そんな男に恋したら、よっぽどの経験値積んでないと弄ばれて傷付くのがオチですね。『凪のお暇』のゴンさんみたいなイメージですかね。
恋愛偏差値低めの私が勝手に書き連ねましたけど、ウブなシルバーの恋の行方はどうなりますことか。
美しいだけじゃないドロドロとした感情だって恋の一部なんだと訴えかけてくるかのようなダークな世界観。魅惑的な空気に酔いしれてくださいませ。
- ●『ゆれる人魚』(2015年)
- 監督アグニェシュカ・スモチンスカ
- 出演キンガ・プレイス / ミハリナ・オルシャンスカ / マルタ・マズルカ