科学者であるウォーレンは、人が恐怖の限界に達したときに脊椎に存在する寄生虫が宿主の脊椎を押しつぶして死をもたらすのでは、と考えた。鬼嫁を使って実験をしたところ、それが実際に存在することを突き止める。
1959年のモノクロ作品ですが、これがとても面白かった。
監督はB級界の名監督ウィリアム・キャッスル。『地獄へつゞく部屋』では骸骨を客席の頭上に飛ばしたり、『Mr. Sardonicus』では結末を観客の多数決で決めたりと、低予算ながら手法を凝らした作品、宣伝で一躍有名になりました。
今作も彼のサービス精神が爆発しています。
恐怖を餌に巨大化する寄生虫ティングラーは、叫び声が大嫌い。だから叫び声を上げることができない聾唖者は恐怖が限界に達するとティングラーによって殺されてしまう・・・なんて突飛な設定でありながら、アナログなティングラーのキモかわさに徐々に心奪われてしまうこと間違いなし。
ティングラーは科学者ウォーレンによって捕まえられるのですが、もぞもぞと逃げ込んだ先は映画館。突如画面が暗くなり、監督の声が響き渡ります。
「みなさん、ティングラーが映画館に逃げ込みました! さあ悲鳴をあげてください!叫べーーー!」と。
ここでメタな視点が突如入り込み、一瞬家で観ていた私もハッとしました。
あ、叫ばなあかん?と。
まるで作中に放り込まれたようなインタラクティブな演出はウィリアム・キャッスルらしくて、4DXを体感したことのある現代人でも感動するレベル。
一人だとなかなか恥ずかしいですが、家族や友達と鑑賞しながらぜひ作中に叫んでみてくださいな。
- ●『ティングラー』(1959年)
- 監督ウィリアム・キャッスル
- 出演ヴィンセント・プライス/ジュディス・イヴリン/ダリル・ヒックマン