【カッコイイオトナ】太田恵理子さん「障がい児がうまれても絶望しないインクルーシブな未来へ 」


どのような活動をしていますか?
私は、障がい児通所支援事業として、障がいのある子どもたちが通える施設と、認可保育園を経営しています。 この保育園では、子どもたちが部屋を移動するだけで、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリを受けることができます。
また、看護師も常駐しており、医療的ケアが必要な子どもでも安心して通える環境を整えています。
きっかけを教えてください
私の息子は、妊娠六カ月のときに病気を抱えているとわかり、生まれた時には脳がほとんどない状態でした。 出産前は「お腹の中で亡くなるかも」とも言われ、絶望的な気持ちになりましたが、無事に生まれてくれました。
その後、頭からお腹へ管を通す手術を受けた息子を保育園に預けようとしたところ、どこも受け入れてくれず、私は仕事を辞めざるを得ませんでした。
「息子のような子ども達を受け入れてくれる場所がないなら、自分で作るしかない」それが原点です。
もう一つの課題はリハビリでした。息子のために片道40分かけて通っていた日々は本当に大変で、通っている保育園でそのままリハビリが受けられる環境があればと、事業を立ち上げました。
当時は資金も人脈も経験もゼロ。女性起業塾や保証協会のセミナーなどに参加して、とにかく〝やりたいこと〟をたくさん口に出して、伝えて、動き始めました。
徳島を拠点にするメリットとデメリット
一番のメリットは、新しいことをするとすぐに注目されることです。 徳島では、メディアが取り上げてくれたり、声をかけてもらえる機会が多く、ありがたい環境だと思っています。
デメリットは交通費。都会に比べて情報や機会が少ないので、学びに行こうとするとどうしてもコストがかさみます。 オンラインでの学びも増えてはきましたが、やはりリアルでのつながりも必要なので、そこは悩みどころですね。
今後の目標や夢は?
私のミッションは、〝障がい児が生まれても、絶望しない社会をつくること〟です。
そのために必要なのが、次の3つの条件です。
1つ目は、障がいのある子も当たり前に入れる保育園があること。 2つ目は、保育中にリハビリができる環境があること。 3つ目は、医療的ケアに対応できる看護師が常駐していること。
『保育』『リハビリ』『看護』この三つが揃えば、親が仕事を辞めなくてもいい。今までと変わらない生活を送ることができ、子どもたちも健やかに育つことができます。
そうなれば、障がいのある子もない子も一緒に育ち、〝違い〟が当たり前になります。 小さい頃から多様性の中で育つことで、みんな自然と優しい子になります。
〝偏見のない子どもたちが大人になれば、社会はきっともっと優しくなる〟。 そのためにも、理学療法士や作業療法士が保育園に常駐できる制度をつくるべく、現在ロビー活動にも力を入れています。
「どうせ徳島だから」と夢を諦めることについてどう思う?
県外に出て夢を追うこと、それ自体はとても良いことだと思っています。実際、多くの成功している経営者は、地元に還元したいという気持ちを持っています。 だから、いつか徳島に戻ってきてくれたらいいなと思うし、それまで自由に活動すればいいと思います。
「どうせ…」という言葉で諦めるのはもったいない。 「どうやったらできるのか」に思考を切り替えた時に、きっと新しいアイデアが浮かぶはずです。
読者へメッセージ
皆さんは、可能性のかたまりです。だからこそ、自分のやりたいことは、どんどん口に出してほしいと思います。
私は創業から2年半のときに、年商の4倍にあたる2億5千万円の融資を受けました。
周囲からは無謀だと言われつつ、それでも「どうやったらできるか」をひたすら考え、人に伝え続けたからこそ実現できました。
自分の想いを言葉にして、小さな成功体験を積み重ねることで、自信が育ちます。 その自信は人を輝かせます。
輝く大人が増えれば、徳島はもっと楽しくなるはず。 だからまずは、やりたいことを声に出すこと。それがスタートです。
インタビュー動画はこちら
※この記事はフリーマガジン「AWAP 2025年号」に掲載された内容をWEB用に再構成したものです。
取材は、2024年11月23日(土)に開催された公開収録イベント
「夢語りシンポジウム」にて実施されました。