今回ご紹介する作品はSF映画『チャッピー』。
『チャッピー』っていう響きだけ聞くと、かわいい犬の物語かな?とか思われるかもしれませんが、主人公はバリバリのロボット。
警備用として開発されたロボットが知能を持ち、彼を利用しようとする人間と守ろうとする人間の戦い、そして育まれゆく愛を描いた作品なのです。
知能を持ったロボットが出てくる作品といえば、ウィル・スミス主演の『アイ、ロボット』や、忘れてはならないシュワちゃん主演の『ターミネーター』シリーズなどがございますが、それらと比べて「人間の肉体とは?魂とは?」という哲学的問いが色濃いのがこの『チャッピー』。
人工知能を持ちながらも知識がゼロなチャッピーは急激に色んなことを吸収していくんですが、決してい良いことだけではなく、むしろ犯罪に手を染めるような悪事を教え込まれてしまう……その過程が、小さい頃から知ってる近所の子供が学年が上がるごとに髪の毛を染めピアスを開けまくり盗んだバイクで走り出すような見るからに不良少年になっていくのを目の当たりにしているような心苦しさでいっぱいなのです。
ロボットなのに赤子から少年のように成長していく過程が描かれているのが斬新で、先に挙げた2作品よりも一層感情移入してしまうからこそ辛い描写も多いのですよ。
それでも『チャッピー』がどこかコメディの匂いがするのは、チャッピーと家族のように接するヨーランディとニンジャの存在。変な名前ですが、これ、実名です。
二人はダイ・アントワードというラッパーグループで、作中でもパートナー役ですが、実際も結婚している仲。ニンジャは全身タトゥー、ヨーランディは髪の毛もお肌も真っ白なロリという強烈な見た目の二人が『チャッピー』の世界では何の違和感もなく存在しているからすごい。
正直二人はぱっと見かっこいいんだけどどこかダサい。
だって自分のこと「ニンジャ」って名乗ってるんですよ?
作中で流れる彼らの曲もかっこいいのにダサい。
全力でダサいことをしている大人ってかっこよくないですか?
彼らの存在がシリアスな内容の『チャッピー』を中和させていて、辛い描写がありながらも最後まで見守りたいという気持ちにさせてくれるのです。
他にもヒュー・ジャックマンやシガニー・ウィーバー姉さんといった豪華な俳優さんが出てるし、最後には「人間とロボットの境目って何なんだろう」と考えさせてくれるし、B級の枠には収まらない今作、面白いからぜひ観て欲しい!
- ●『チャッピー』(2015年)
- 監督ニール・ブロムカンプ
- 出演シャールト・コプリー/デーヴ・パテール/ワトキン・チューダー・ジョーン