網膜スキャンによって人類が管理される近未来。
数年に一度の大嵐に見舞われる中、記憶をなくした男を助けた医師ハイメは大きな陰謀に巻き込まれることになる。
メキシコ発のSF作品なのですが、記憶をなくした男を中心に展開するアクションものかと思いきや、彼を助けたハイメと彼を取り巻く人たちとの人間模様を絡めたサスペンスもの。
はっきり言って地味ではある。けど、メキシコらしい(知らんけど)、ハリウッド作品にはないゆるさとヤバさがあって意外にもおもしろいのだ。
メキシコ版小堺一機って感じのちっちゃなおじさんである医師のハイメが主人公感ゼロだけれどもSF作品の中にリアリティを出している点や、男の正体がわかりそうでわからないままジリジリ進むプロットもなかなか秀逸。
SF作品にありがちな全人類管理されてる系の話としては新鮮味はないけども、ラストに明かされる「真犯人の目論見」はなんとなくメキシコちっくなヤバみがあって斬新なのです。
その目論見に共感できる人と拒絶する人と分かれそう。ぜひそれについて話し合ってみたい。
垢抜けなさもあるSFですが、謎の男の妙な色気と小さいおじさんの愛らしさでついついラストまで見ちゃう作品です。ぜひ。
- ●ブロークン・アイデンティティ(2012)
- 監督ダビド・ルイス
- 出演クノ・ベッカー/アルバロ・ゲレロ